ヒラメからビスマス209などが数百Bq/kg検出?

表題のようなツイート(http://twitter.com/#!/JYCEagara/status/76401896696463360)を拝見しましたが、ありえない話です。というか、ビスマス209は自然界由来の放射性物質ですし。それで、もし100Bqのビスマス209があったら、どの程度の量なのか計算してみました。式がたくさん出てくるので、自分でやってみたい人はやってみて、みたくない人は結果に飛んでください。

まず、半減期をT秒の放射性物質を考えます。最初に物質がN_0個あったとすると、t秒後の個数Nは
N=N_0 e^{-\lambda T}
と表せます。1秒後にはN_1=N_0 e^{-\lambda}個に減少しているので、1原子1秒あたりの壊変数は
\frac{N_0 - N_1}{N_0}=1  -2^{-1 / T} ―(1)
となります。ここで、ビスマス209の半減期は1900京年\approx 6.0 \times 10^{26}秒、比較的半減期の短い炭素11でも20分\approx1200秒なので、1/Tは1に比べて十分小さいと見ることができます。そこで式(1)を-1/Tについてテイラー展開すると
1 - 2^{-1 / T} = 1 - \sum_{n=0}^\infty \frac{(\ln 2)^n}{n!} \cdot \left(-\frac{1}{T}\right)^n \approx \frac{\ln 2}{T}
となります。つまり、1原子あたりの放射能\frac{\ln 2}{T} Bqであるということです。これを元にすると、ビスマス209が1原子あたりにもつ放射能は約1.2 \times 10^{-27}Bq、1mol(6.0 \times 10^{23}個)あたりの放射能は約7.0 \times 10^{-4}Bqとなります。逆に1Bqあたりの物質量は約1.4 \times 10^{3}molです。とすると、ビスマス209は1molあたり209gなので、100Bqものビスマス209があれば、それは約30トンもあるということになってしまいます。あれ?ということはヒラメ1kgあたり数百ベクレルだと、ヒラメ1kgに対してビスマス209が何十トンもあることになってしまいます。これはありえないですね。ちなみにプルトニウム239が100Bqあれば4 \times 10^{-8}gなので、こちらはあってもおかしくない数字です。