「しょうがい」の表記

知人から「しょうがい」の表記について問い合わせがあったのでまとめてみました。

「しょうがい」の表記については、当事者の間でも様々な議論が展開されていますが、2009年に内閣府に設置された障がい者制度改革推進本部と、有識者会議である障がい者制度改革推進会議での議論が、非常に参考になると思います(私のボスも委員として参加していました)。そこでは、最終的な合意を得ることはできず、当面の法令等における表記は「障害」とすることになっています。
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/kaikaku.html

表記については、「障がい」のほか「障碍」「チャレンジド」「要支援者」などの案が示されていますが、個々の議論については、以下のPDFによくまとまっています(上記推進会議で配布された資料です)。
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/k_26/pdf/s2.pdf

この議論の前提として重要なのは、障害の「個人モデル(医療モデル)」と「社会モデル」です。前者は、障害を個人の特性として捉え、治療などで対応しようとする考え方、後者は、障害を社会と個人の関係として捉え、社会環境の整備で対応しようとする考え方です。2006年に採択された障害者権利条約以降、国際的に後者が主流となっています。

社会モデルをもう少しかみ砕くと、例えば2階建ての建物があったとして、1階と2階をつなぐものがなければ、登れるのはロッククライマーくらいでしょう。はしごを設置すると上れる人が増えますね。階段、エスカレーター、エレベーターと上れる人が増えていきます。2階に上れない人を「障害者」と呼ぶことにすれば、設置されている設備によって障害者の範囲が変わるわけです。これは極端な例ですが、社会モデルの考え方です。

もちろん、現実的には個人モデルと社会モデルは二者択一ではなく組み合わせが必要ですが、「障害者」の表記に当たっては「社会モデル」を念頭に置いて考えていかなければなりません。同時に「健常者」という語についても考慮する必要があり、まだ政治的に議論が尽くされたとは言い難いと思います。

以上のことから、私は現状では「障害者」を主として使用し、対比が必要な場合は「障害のある人」「障害のない人」と使うことにしています。